京町家の魅力の1つ。先人の知恵と想いを感じる意匠の楽しみ方

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京町家の魅力の1つが、暮らしの中で工夫を積み重ねながら発展してき知恵と、細部にわたって洗練された素材・造形です。

格子、通り庇、虫籠窓、土壁の構成は華奢で洗練され、また暖簾、簾御簾などで季節ごとのしつらえをおこないます。

地域ごとに特徴のある町家の中でも、今回は京町家の意匠や特徴についてご紹介します。

目次

実は厳密な定義がある京町家

京“町家”と記載されるように、京都では“京町家”と呼ばれいています。

平成29年11月に京町家の価値を改めて見直し、保全・継承に繋げるため、「京都市京町家の保全及び継承に関する条例」(京町家条例)が制定されました。

この京町家条例では、建築基準法が施行された昭和25年以前に建築された木造建築物で、伝統的な構造及び都市生活の中から生み出された形態を有するものを「京町家」として定義しています。

通り庭や火袋、坪庭、通り庇、格子などの意匠も条件の1つされています。

京町家とは

出典:京町家の総合情報サイト「1.京町家を保全・継承するために」

公益財団法人京都市景観・まちづくりセンターでは、京町家の外観に関する評価をまとめた京町家プロフィールを整備し、所有者やその関係者の認識を深め、適切に維持・管理、および流通されることを目指しています。

※1 建築年が不明な場合は、法務局で閉鎖登記簿(有料)を取得いただくと記載されている場合があります。

※2 「平入りの屋根」とは?建物の出入口が屋根の棟と平行する側(平)にあるもののこと。「『平入り屋根』の条件が適用されない場合」に該当するものは、適用されません。

虫籠窓や鐘馗さん。町家の外からでも見ることができる意匠や特徴

「京町家」の定義の条件にもなっている格子や通り庇のほかにも、町家の外から見かけることができる意匠や特徴があります。

通り庇

「通り庇(とおりびさし)」は、京都の町家に見られる特徴的な構造で、建物の正面に設置された庇のことを指します。

この庇は通りに面して設けられ、雨風を防ぐだけでなく、夏の強い日差しを遮る役割も果たします。

また、通り庇は建物の美観を高める装飾的な要素としても機能し、町並みに独特の風情を加えます。庇の下には通常、店舗や住居の入口があり、来訪者に対しても快適な環境を提供します。庇の下には「ばったり床几」と呼ばれる簡易的なベンチが設置され、休憩や社交の場として利用されていました。

格子

京町家 意匠

家の外壁から突き出した形で設置される格子構造を指します。

主に1階部分の窓や玄関に用いられ、通りからの視線を遮りながらも、風通しと採光を確保する役割を果たします。出格子は防犯面でも優れており、外部からの侵入を防ぎます。

営む商売の種類などによって格子のデザインが異なるのも特徴の1つです。

虫籠窓

京町家 意匠

通りに面した2階外壁に設けられた、土塗格子(虫籠格子)を並べた窓。

幕府の周辺眺望規制により周辺を見渡せる大窓の設置が禁止されたため、広まったと言われています。

虫籠窓は通風と採光を確保しつつ、外部からの視線を遮る役割を果たします。また、火災時には炎の侵入を防ぐ効果もあります。

ばったり床几 / 揚げ見世・見世棚

京町家 意匠

前を通る人に商品を見せるために使われていた「見世棚」。壁際に跳ね上げて収納するので「揚げ見世」とも。仕舞屋風の町家が増えて対面販売が減った際には、「ばったり」とも呼ばれていました。

通行人が一休みするための場所として利用され、地域の人々や訪問者が自然に集まり、交流する場になっていたようです。

(一文字瓦、饅頭瓦)

京町家 意匠

切り落とされたように真っすぐ伸びる「一文字瓦」。連続して水平なラインを作ることで、統一感のある美しい街並みを作り出します。

また、「饅頭瓦」とよばれる、とりありの部分に丸い瓦が取り付けられた瓦を使用する町家を見かけることもあります。

鐘馗さん

京町家 意匠

京町家の屋根に設置されている陶器の像「鍾馗さん」。

鍾馗は鬼を退治する力を持つとされ、魔除けや厄除けの守護神として親しまれています。

町家ごとに表情やデザインが異なるので、違いを見ながら歩くのもおすすめです。

犬矢来

荷車の激突防止用の柵。江戸時代はクリかスギの小丸太を使用し、直線的な形状だったようです。

未舗装の道の泥はねによる外壁の汚れ防止や、人が壁に近付くのを防ぐ目的で設置されるようになりました。

明治以降は割竹を湾曲させた竹矢来が一般的になっています。

駒寄せ

京町家の「駒寄せ」は、家の前に設置される低い石や木の構造物で、馬をつなぐために使われていました。

名前の通り、かつては駒(馬)が家の前に留まる場所として機能し、馬の乗り降りや荷物の積み降ろしに便利な役割を果たしていました。

また軒下空間を家主が活用しやすくするための囲いにもなっています。

火袋や坪庭など、町家の内側で見かけることができる意匠や特徴

火袋

火袋

建物の中央部分に設けられた吹き抜け空間。

この構造は、炊事による熱や煙などを逃がす役割を担い、空気の循環を促進します。

表に水を打った京町家には、涼やかな風が舞い込み、夏には暑さを和らげ、冬の煙の排出を助ける機能も果たしていました。

通り庭

通り庭

玄関から奥へと続く細長い通路状の空間です。

玄関から裏庭や中庭までを貫くこの空間は、通風や採光を確保し、家全体に自然の風と光を取り入れる役割を果たします。

通りに面した場所は客人の対応や作業場になる「店庭」、おくどさんを置く炊事場は「走り庭」と呼び分けて使用されていました。

おくどさん

おくどさん

かまどを意味する京都の呼び名で、台所に設置される調理用の炉です。

おくどさんは主に薪を燃料として使用します。

伝統的な京町家の台所には必ずと言っていいほど備わっており、家族の食事を支える重要な設備でした。

坪庭・奥庭

奥庭

限られた敷地内で自然を楽しむために設けられた坪庭・奥庭。

坪庭は建物の中央や周囲に配置され、住まいの各部屋に自然光と風を取り込み、季節の変化を感じられる空間を提供します。

一方、奥庭は建物の奥に位置し、静寂な環境を保ちながら、家族の憩いの場として機能してきました。

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