島根県立大学が、地元企業の中村ブレイス株式会社の古民家再生プロジェクトの一環として、大田市大森町にコワーキングスペースを併設したサテライトキャンパス「石見銀山まちを楽しくするライブラリー」をオープンし、学生と町民と観光客をつなぐ新しい学びの場を作り出しました。
石見銀山まちを楽しくするライブラリーがうまれたきっかけ
石見銀山まちを楽しくするライブラリーは、島根県立大学と、地元で義肢装具の製造販売を手掛ける中村ブレイス株式会社が、令和元年に連携協定を結び、スタートしたプロジェクト。
中村ブレイスの中村俊郎会長から、空き家となっていた町内の「旧松原邸」を、島根県立大学の学生の学びの場となる施設として活用できないかという提案を受け、学生と地域住民と観光客とのハブとなる新しい形のライブラリーの構想に着手しました。
このプロジェクトの起点となった島根県立大学 地域政策学部 地域づくりコースの故井上厚史教授の遺志を受け継ぎ、同コースの平井俊旭講師がプロジェクトの統括と施設のデザイン設計を担当しています。
島根県立大学地域政策学部は、地域と共生し、地域と共に生きる人材を育成することを目指していて、石見銀山まちを楽しくするライブラリーはそのビジョンを具現化する理想のモデルケースと位置付けています。
まちを楽しくする活動の拠点として、地域のみなさんと一緒にこの施設を活用してまちを盛り上げていきたいとつくられました。
うまれかわった大規模な旧商家「松原家住宅」
石見銀山まちを楽しくするライブラリーは、重要伝統的建造物群保存地区にある大規模な旧商家「松原家住宅」をリノベーションしたもの。
松原家は、酢を醸造・販売していた有力な商家の一つで、旧朝鮮銀行総裁を務めた松原純一氏の生家として知られています。敷地約575平方メートル、木造一部2階建て延べ約592平方メートルの主屋のほかに蔵2棟。
町内の大半が焼けた「大森大火」(1800年)の直後に建築されたとみられる「松原家住宅」は、間口が約20メートルあり、地元では珍しい漆喰(しっくい)仕上げの建物として活用されてきました。
石見銀山まちを楽しくするライブラリーの施設紹介
単に本の貸し借りを行う箱物施設では無く、本を人が集まる一つのコンテンツとして位置付け、学生と地域住民と観光客が集える場としての機能を充実させている石見銀山まちを楽しくするライブラリー。
更に個人利用できるコワーキングスペースや、家族で利用できるファミリースペース、カフェや学生と地域住民が企画したイベントができる小さな芝生広場やギャラリーなど、多目的に活用できる様々な機能を持たせています。
石見銀山まちを楽しくするライブラリー
- 住所:島根県大田市大森町ハ-94
- 開館:木曜日〜日曜日(不定期に閉館する可能性あり)
- お問い合わせ:0855-24-2201 / kikaku@u-shimane.ac.jp
- サイト:https://ginzan-books.com
著名人の”人生に影響を与えた本”が並ぶ「行燈本棚」
エントランスに入るとまず目に入るのは畳の床から天井まである、巨大な発光する行燈をモチーフとした3つの「行燈本棚」。
この本棚には、学生が著名人や地域で活躍する方々に「人生に影響を与えた本」というテーマで選書を依頼し集めた200冊を超える本が開架されています。宇多田 ヒカルさん、アグネス チャンさんをはじめ、石飛 厚志さん(島根県雲南市長)、高橋 俊宏さん(Discover Japan 編集長)、原田 マハさん(小説家)が選んだ多くの書に触れることができます。
石見銀山の坑道(間歩)を模した「えほんのどうくつ」が、石見銀山まちを楽しくするライブラリーらしさあふれる
エントランスにつながる蔵には石見銀山の坑道(間歩)を模した「えほんのどうくつ」があり、こちらには子どもに人気の絵本が200冊以上開架されています。
「行燈本棚」も「えほんのどうくつ」も、きっかけを創出することで、本との出会いの場を提供しています。
お気に入りの本と出会ったらカフェで気の向くままに
石見銀山まちを楽しくするライブラリーでは本の貸し出しをしていませんが、施設内のテーブル席や坪庭に面した縁側やパラソルの下のソファ席などお気に入りの場所で自由に本を読むことができます。
カフェも併設しており、学生が提案する地域の食材を活用したスイーツや、大田市で焙煎されたコーヒーや出雲のお茶などを楽しむことができます。
2階は個人利用できるコワーキングスペース
石見銀山まちを楽しくするライブラリーはサテライトキャンパスですが、個人利用できるコワーキングスペースが2階に用意されています。
1時間300円で活用できるので、ワーケーションとして利用してもよさそうです。