京都・御所南に2026年4月25日(土)、OSAJI初のグローバルコンセプトストア、お匙 京都がオープンしました。
ここはもともと、キンシ正宗の酒蔵として使われていた築100年以上の登録有形文化財です。以前は京都町家麦酒醸造所として使われ、ケのハレでも2023年にその姿を紹介しました。
その元酒蔵が、OSAJIの新たな拠点へ。
OSAJIはなぜこの建物を選び、どのように新しい店舗へと変えたのでしょうか。現地を訪れ、株式会社OSAJIにも話を聞きました。
築100年以上の元酒蔵がお匙 京都に

お匙 京都があるのは、京都市中京区の堺町通沿い。二条通から少し北へ歩いた御所南エリアです。
この建物は、かつてキンシ正宗の酒蔵として使われ、その後は京都町家麦酒醸造所となりました。


ケのハレでも2023年にこの場所を取材。当時は、酒蔵の姿を残した建物の中に醸造設備が設けられ、クラフトビールが造られていました。
そして2026年、同じ場所にオープンしたのがお匙 京都です。
以前の建物や醸造設備、中庭に湧く「桃の井」については、当時の取材記事で詳しく紹介しています。
関連記事:京都町家麦酒醸造所|キンシ正宗の酒蔵が作る、京都の名水仕込みクラフトビールを堪能
古い建物に、新しい役割を重ねる


お匙 京都になって、建物はどのように変わったのでしょうか。
株式会社OSAJIによると、建物をまったく新しいものにつくり変えるのではなく、もともとの状態を活かして磨き上げることを大切にしたといいます。

店内では、以前から使われてきた天井の梁や、昔ながらの木製の窓枠などを見ることができます。

歴史ある建物に寄り添いながら、そこへOSAJIらしい要素を加えていく。
新しい店舗として必要な手を加えながら、もともとの建物を活かしています。
また、OSAJIではお匙 京都を、オープンした時点で完成した場所とは考えていないそうです。
これからも変化しながら育っていく場所として考えていることも、今回の取材で聞くことができました。
中庭の「桃の井」は、お匙 京都でも使われている

建物とともに、この場所で今も使われているものがあります。
中庭に湧く地下水「桃の井」です。
桃の井は、かつて日本酒の醸造に使われ、その後、京都町家麦酒醸造所ではクラフトビールの仕込み水にも使われていました。
2023年に取材した際には実際に口にし、やわらかく、甘みのある軟水だったことを紹介しています。
お匙 京都となった現在も、中庭では桃の井の水が湧き続けています。

BARで提供される「甘酒スムージー」には、桃の井の湧水で仕込んだ生甘酒を使用。さらにLABの線香づくりでは、香原料を練る工程にその湧水を取り入れています。
日本酒からクラフトビール、そして甘酒や線香づくりへ。使い道を変えながら、桃の井の水は今もこの場所で使われています。
SALON、BAR、LAB、GALLERY。お匙 京都でできること
現在のお匙 京都には、化粧品・食・香りを通して「暮らしの処方」を提案する場所として、SALON、BAR、LAB、GALLERYの4つのエリアがあります。
SALON|OSAJIの商品を試し、選ぶ

SALONでは、OSAJIのスキンケアやメイクアップ、フレグランスなどを実際に試しながら購入できます。
お匙 京都限定の商品も展開。

「オサジ オードトワレ Kyoto〈キョウト〉8mL」 2,970円 税込(右)
「オサジ モイスチャーベール Kyoto〈キョウト〉」と「オサジ オードトワレ Kyoto〈キョウト〉」には、京都という土地や店舗の建築から着想を得た香りが使われています。
BAR|桃の井の水と発酵を取り入れたメニュー

BARでは、「発酵」を軸にしたドリンクや焼菓子を提供しています。

シグネチャードリンクの「甘酒スムージー」は、桃の井の湧水と京都産の米を使った生甘酒がベース。旬の野菜や果実を合わせ、季節ごとに数種類が用意されています。
寒天ベースやトッピングも選ぶことができ、その日の好みに合わせて組み合わせを楽しめます。
焼菓子には、米粉や旬の野菜を使ったマフィンやケーキなどを展開。メニューは季節によって変わります。
LAB|香りを選び、線香を自分でつくる

LABでは、ホームフレグランス調香専門店kako(家香)による、お匙 京都限定の線香づくりを体験できます。
用意された香りから自分が心地よいと感じるものを選び、香原料と調香したオイルを合わせて練り、専用の機械で押し出して線香の形へ。

香りを選ぶだけでなく、実際に自分の手で線香をつくるところまで体験できるのが特徴です。
GALLERY|OSAJI初のギャラリー

GALLERYは、OSAJIがキュレーションするブランド初のギャラリーです。

展示するのは、アート作品から工芸品まで。OSAJIの考え方とつながる作品や作家を取り上げ、さまざまな展示を行います。
SALONで商品を選び、BARで食を楽しむ。LABでは香りをつくり、GALLERYでは作品を見る。
一つの建物の中に、それぞれ異なる過ごし方が用意されています。
LABでの線香づくりやBARの「甘酒スムージー」は実際に体験しました。詳しい工程やメニューについては、姉妹媒体「京都のいちばんち」で紹介しています。
関連記事:お匙 京都を体験|元酒蔵で楽しむ調香体験と京都限定カフェ
OSAJIと京都の元酒蔵をつないだ縁

そもそも、なぜOSAJIが京都の元酒蔵に新たな拠点をつくることになったのでしょうか。
取材すると、最初から京都への出店を前提に、この建物を探していたわけではありませんでした。
背景にあったのは、OSAJIにとっての転換期です。
2025年、ブランド1号店だった東京・谷中の店舗が閉店。さらに、鎌倉で飲食事業などを展開していたensoも閉店しました。
いずれも建物の取り壊しが理由だったといいます。
大切にしてきた2つの拠点を失うなか、ブランドディレクターの茂田正和さんは、OSAJIの思想や美意識をより深く表現できる新たな拠点を考えていました。
そんな時、鎌倉のensoの世界観を知る、茂田さんの知人でキンシ正宗の親族にあたる方から、この酒蔵を使わないかと声がかかったといいます。
ブランドを改めて見つめ直していた時期に生まれた、元酒蔵との縁。
そこから京都での新しい拠点づくりが始まりました。
元酒蔵とOSAJIをつなぐテーマ「醸す」
お匙 京都では、「醸す」が一つのテーマになっています。
ただ、今回話を聞くと、元酒蔵という建物だけから生まれたテーマではないことが分かります。
OSAJIは、肌の角層や皮膚常在菌に着目してきたスキンケアブランドです。
また、茂田さんは化粧品開発以前から料理をライフワークの一つとし、「美容をなす3要素は、精神、食、化粧品」と考えてきたといいます。
ブランド1号店だった谷中店でも、化粧品とともに甘酒を提供していました。
そうしたOSAJIの考え方と、酒を醸してきたこの建物。その両方につながる言葉として、お匙 京都では「醸す」がテーマになっています。
店名をお匙 京都とした理由

店舗名にも、この店ならではの考えがあります。
OSAJIというブランド名は、江戸時代に大名や将軍に仕えた医師を指した「お匙」に由来します。
医師が匙を使って薬を調合していたことから、親しみを込めて「お匙」と呼ばれていたそうです。OSAJIは、健やかで美しい皮膚を保つためのライフスタイルを提案する、現代の「お匙」でありたいとしています。
初のグローバルコンセプトストアとなる京都では、日本発のブランドであることや、この名前の由来を伝えるため、アルファベットの「OSAJI」ではなく「お匙 京都」という名称を採用。
店舗では、独自に制作された「お匙」のロゴも使われています。
お匙 京都の店舗情報
- 店舗名:お匙 京都
- 住所:京都府京都市中京区堺町通二条上る亀屋町172
- 営業時間:10:00〜18:00(飲食L.O.17:30)
- 定休日:月曜日(祝日の場合は翌平日)
- アクセス:京都市営地下鉄烏丸線 丸太町駅から徒歩約6分
- 公式サイト:お匙 京都
築100年以上の建物を、昔の姿のまま残すのではなく、今の使い方に合わせて手を加える。
お匙 京都では、古い梁や窓枠が残る一方で、BARやLABといった新しい使い方が生まれています。「桃の井」の水も、用途を変えながら今も使われています。
古いものを残しながら、今の暮らしに合う形へ変えていく。使い続けることも、古い建物を残していく一つの方法です。
※本記事は2026年7月30日の現地取材、株式会社OSAJIへの取材回答、および2023年にケのハレが実施した京都町家麦酒醸造所の取材内容をもとに作成しています。最新情報や詳細は公式サイトをご確認ください。
編集・文・写真:ケのハレ










